会長挨拶

サイコネフロロジーの重要性とこれからの課題

 「サイコネフロロジー(psychonephrology)」は精神科と腎臓病学や腎臓病看護学などが重なる部分であり、さまざまな職種の医療者が参加することによってはじめて成り立ちます。
 精神科からみると、サイコネフロロジーは精神科の下位領域の1つであるコンサルテーション・リエゾン精神医学のうち、慢性腎疾患、主に慢性腎不全・透析と腎移植に関わる部分ということができます。このリエゾン精神医学ですが、精神科が他の診療科と協力して、重症身体疾患の患者について、心理と行動の問題や精神障害の予防、早期発見、治療とケアを行う領域と規定されています。
 一方、腎疾患を診療する医療者が、患者の心理と行動、病気や治療による生活の負担、これらに関係する患者の生き方、さらに患者の生と死の問題などを重視し、より深く学びたいと思うこともあります。このときの臨床と研究もサイコネフロロジーです。
 多くの重症身体疾患のなかで、特に慢性腎疾患を取り出して、サイコネフロロジーという名前をつけ検討しようとすることには理由があります。その1つは、慢性腎疾患の患者のストレスは強く、さらに他の疾患とは異なった特徴があること、もう1つは慢性腎疾患の患者にはしばしば原病以外の身体的不調や薬の副作用が起こり、それによって脳の機能の障害が生じやすいことです。これらの理解は日常臨床において重要であり、特に前者はよい医療者・患者関係を作るための基本的な知識になると思います。また、上の2つの理由によって実際に心理と行動の問題や精神障害が起こることもまれではありません。
 このように、サイコネフロロジーは非常に重要であり、この「日本サイコネフロロジー研究会」も作られました。1年に1回の学術集会では、さまざまな職種の医療者が参加して活発な議論が行われています。
 しかし、残念なことですが、サイコネフロロジーに習熟した医療者はまださほど多いとはいえません。本研究会のこれからの課題は、学術集会の開催に加えて、臨床的・教育的な「日常活動」を行うことだと考えています。たとえば、困ることや迷うことがあればこのホームページを通していつでもほかの人に相談することができるシステムを作ることや、同じくこのホームページでサイコネフロロジーの経験が豊富な精神科医や心理士を紹介することなどです。そのほかにもいろいろあると思います。
 このように課題は残されていますが、サイコネフロロジーは非常に重要であり、職種を問わず、多くの医療者がサイコネフロロジーの考え方と活動に関心をもち、参加してくださることを期待しています。

埼玉医科大学かわごえクリニック メンタルヘルス科
堀川 直史