理事長 就任の挨拶
一般社団法人 日本サイコネフロロジー学会
理事長
政金 生人
2025年7月に前理事長西村勝治先生の後を受け、本学会の理事長に就任した矢吹病院の政金生人です。私は山形大学卒業後、一貫して透析治療に従事してきており、早いもので40年目を迎えました。私の医師としてのキャリアは、慢性透析治療の発展、成熟の歴史と伴にありました。新たな合成膜の開発、エリスロポエチン製剤の使用、HDF療法の普及など、技術や薬剤の進歩が、透析患者のQOLを確実に改善したことをリアルタイムに体験しました。そして現在は、患者の高齢化や価値観の多様化を背景に、より患者人生に寄り添った医療が求められ時代になりました。
私はこれまで、「透析の質が患者の体調や生活そして心の在り様にも大きな影響を与える」という本学会第8回大会長石崎允先生の考えを受け継ぎ、患者の愁訴を中心に据えた透析治療を行ってきました。また、自身が森田療法に救われた経験から、常に大切な順番を考え「あるがままを受け入れて生きる」という日常のものの考え方が、様々な不安や葛藤を鎮めることに役に立つと、内科医の立場で精神心理のプライマリーケアに努めてきました。
サイコネフロロジー学会は、1990年に東京女子医科大学腎臓病総合センター所長であった太田和夫先生と春木繁一先生が中心となって、日本サイコネフロロジー研究会として発足しました。それは若くして末期腎不全となった精神科医である春木先生と、日本の透析・移植医療の将来を担い始めた太田先生との運命の出会いでした。それ以降本学会は変わることなく、維持透析、移植医療にかかわる精神心理的な問題について、精神心理の専門家だけでなく患者に関わる全ての職種が集い、意見交換をし、学びを深めてまいりました。
本学会理事長就任にあたって、太田先生、春木先生と多くの先輩方の志を受け継ぎ、患者の人生の物語を大切にするサイコネフロロジーという場所をさらに高めていきたいと思います。それに加えて、前西村理事長が取り組まれた学術団体としての基盤整備と学術的な発信、人材育成を引き続き進めていきたいと思います。
より多くの皆様に本学会に参画していただけますよう、心よりお願い申し上げます。
